日本時代の軍需工場社宅がスラム廃墟化!仁川・富平区「旧三菱社宅」 (全2ページ)

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1945年の第二次世界大戦終戦後に日本の統治から外れてから、日本時代の建造物は「日帝残滓」としてことごとく取り壊されていった事もあり、韓国で日本時代の古い建物を探す時は相当意識を集中しないとろくに見つかりもしないのが「戦後70年」の実情でもあるのだが、釜山のタルトンネ「峨嵋碑石文化村」のように戦後のドサクサで日本人の墓石の上にスラムを建てちゃった例もあるし、探せばまだまだ他にも因縁深い物件は見つかるというもの。

韓国 仁川 富平

で、今回訪れたのは韓国の首都ソウルから電車で1時間そこそこで行ける仁川広域市の富平区という場所。ここは仁川市内でも仁川港よりもずっとソウル寄りの場所に位置しており、首都圏のベッドタウンとしても随分栄えている。元々富平区は日本統治時代から陸軍の造兵廠があった場所で、1938年に三菱重工業の労働者社宅として建設された建物が未だに貧困層が暮らす住居として使われている場所があると知り、一度見に来ようと思っていたのだ。

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ソウル駅方面から地下鉄1号線に揺られて約50分で富平(부평)駅に着く。そこから仁川地下鉄1号線に乗り換えてひと駅、「東樹(동수)駅」で降りる。改札の横がエキナカ卓球場になっていて、神戸新開地の「メトロこうべ」のようなノリでなかなか緩い。

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東樹駅3・4番出口を出て徒歩3分程度、「富平2洞住民センター」がある方向に進んでいけば、その近くが旧三菱社宅である。Googleマップの航空写真で見ても、この住民センターの西側だけ屋上が防水塗装の緑色で統一された韓国にありがちなコンクリート家屋とは異なるボロ長屋が連なる一画が視認できるので、非常に分かりやすい。

旧三菱社宅はウトロや群電前どころではない壮絶なスラムだ

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そして三菱社宅が残る一画が見えてきた。もうそこだけ明らかに放置プレイをかまされた感のある荒れ果てた区画となっている。韓国・聯合ニュースの記事によるとこの社宅は現役当時と較べて20%程度しか残っていないものらしい。昔はもっと建っていたという事だろう。

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明らかに日本建築っぽい平屋のオンボロ棟割長屋である。屋根瓦もところどころボロボロに崩れていたりするので補修した跡もあれば防水シートをまるごと被せて応急処置をしながら辛うじて使い続けている箇所も見られる。築80年近い元飯場の労働者社宅である事を考えると京都のウトロや川崎の池上町以上の歴史的価値がある。

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韓国国内ではこの旧三菱社宅を「日帝支配の証拠」として保全すべきだとの声も挙がっているそうだが、実質的には全く手付かずのままである。そしてやはりソウルの九龍村やダルト村同様、行く宛もない貧困層の高齢者ばかりがひっそり暮らす場所となっているのだ。

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旧社宅の東側に土地がせり上がっていて古びた石段がアプローチとなっている。階段脇には廃材ガラクタ、それになぜか便器まで不法投棄されていて見た目にも汚らしい。

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階段の手前から長屋裏手の路地の入口がひっそり口を開けている。ここもガラクタだらけでめちゃくちゃだが、意を決して足を踏み入れると…

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何やら未だに生活道路として使われている名残りが見受けられる路地裏風景。人一人分の道幅しかない。ここで80年近い間、どんな人の営みがあったのだろう。

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階段を挟んだ反対側もこの通りである。こちらはより一層生活感が感じられる。

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旧三菱社宅は、日本統治時代に旧日本軍が中国大陸への進出を図る為の足掛かりとして建てられた軍需工場の下請け・末端の労働者が暮らしていた場所であり、こうして建物自体は残っているとは言えども、建物自体は粗末な造りをしているのがヒビ割れや一部崩落の現況から見ても容易に想像できよう。

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そして旧社宅敷地にはこのような簡易便所が据え置かれていて、明らかに下水道の整備が不十分である事を示している。簡易便所に貼られた「생수」(生水)と書かれた広告ステッカーも、スラム住民向けのものだろうか。恐らく上水道も不十分なのだろう。

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四連簡易便所はビジュアル的にも圧巻。これだけ簡易便所を置かざるを得ない程、昔はかなりの人口があったのだろうが、今では時々くたびれたハルモニを見かけるくらいだ。

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旧社宅中央には住民のものと思しき耕作地まであり、老い先短い住民達の密かな趣味の園芸コーナーになっているのであろうか。

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その隣の区画には、これも韓国では非常にありがちな光景なのだが、場違いに真新しいフィットネス器具が多数設置されていて、高齢者住民の健康増進を名目にした施策なのだろうが、どこで見かけてもこれを愛用している住民を見た試しがない。韓国版「お役所仕事」というやつですかね。

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