ナチスドイツやソ連などに次々支配され苦難の歴史を歩みながらも、ソ連崩壊によってやっとの独立を勝ち取ったバルト三国の中で「珍スポット」という概念があったとすると、真っ先に挙げておいた方が良さそうなのがこれから紹介するリトアニアの「グルータス・パーク」という公園の存在だ。
リトアニアの南部、ヨーロッパ最後の独裁国家と言われるベラルーシとの国境近くにある、温泉保養地としても知られるドルスキニンカイの郊外10キロ、グルータスという小さな街の外れにあるのが、このグルータス・パーク(Grutas Park / Gruto Parkas)だ。一見するとただの公園のようにも見えるかも知れないが、この場所が別名「スターリン・ワールド」と呼ばれ、共産主義時代の遺物を数多く展示しているヨーロッパ屈指の旧ソ連体感テーマパークであると国内外からひっそりと評判を集めている。
リトアニアの首都であるヴィリニュスから2時間、カウナスからは2時間半掛けてバスに揺られてドルスキニンカイへ。そこからリトアニア語で言う「アウトブス・ストーティス」(Autobusų Stotis)もといバスステーションでタクシーを拾って片道10分もあれば着く。園内地図にのっけからレーニン像が大写しにされている。ガチでんな…
この公園はきのこ栽培で財を成し「マッシュルーム・キング」の異名を持つ起業家、ヴィリウマス・マリナウスクス(Viliumas Malinauskas)氏が2001年に設立した公園である。ただの公園ではないのは、この物々しい錆びた鉄条網やそこら中にある悪趣味な石像群の存在ですぐ分かるはずだ。
1990年、ソビエト連邦の崩壊によってリトアニアがバルト三国の中で真っ先に独立を果たした際、それまでリトアニア国内各地にあったソ連時代の「圧政の象徴」である彫像が市民の手で引きずり降ろされ、または破壊されるなどしてゴミ捨て場に廃棄されていた。
打ち捨てられた彫像の山を見かけたマリナウスクス氏は旧ソ連時代の「歴史の証拠」が消えてしまう事を危惧、これらの彫像を自費で回収し、共産主義時代の記憶を留めるべく公園内に飾る事を思いついた。
当然ながらこの行為には一部では激しい反対も起こったという。一部の人々には共産主義時代の苦い歴史は、単純に忌まわしい記憶でしかないからだ。こうした過去の歴史をどうこうしろという論争はどこの国でも付き物ですわな…
だがこの公園の存在は次第にヨーロッパ内でも知名度が高まり、共産主義時代のノスタルジーを気軽に味わえるテーマパークとして認知されるようになった。グルータス・パーク創設者のマリナウスクス氏は2001年度のイグノーベル平和賞を受賞している。
無骨な共産主義時代の彫像や有刺鉄線ばかりでなく、ミニ動物園も併設しておりリア充なご家族連れが休日を思い思いに過ごすのにも適した環境が作られている。
公園入口横にはずらりと連なる長い長い掲示板が。どうやら新聞やネットでグルータス・パークの事が取り上げられた記事をプリントアウトして飾っているみたいだ。
しばらく歩くと入場料を支払う窓口がある小屋を通り掛かる事になる。入場料は2014年7月時点で大人21リタス(約840円)、6~16歳の子供はその半額、6歳未満はタダ。グルータス・パークのオリジナル共産主義グッズがお土産として大量に陳列されているのが目を引く。
共産主義マグカップ、共産主義バッジ、それに共産主義マッチとまあ色々な品揃え。マニアにはたまらん光景だろう。荷物になるので買いませんでしたが…
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