ユムシ、アメフラシ、ヌタウナギ、蚕の蛹…釜山「チャガルチ市場」はゲテモノ・奇食の宝庫だった (全2ページ)

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韓国 釜山 チャガルチ

続いてチャガルチ市場の野外に連なる魚市場も見ていきましょう。釜山の台所というだけあって朝昼夕問わず市場の人間も買い物客も非常に多い。こういう風景はどこの国に行っても無駄にワクワクするものである。

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ここでもホヤが大量に積まれている光景が。日本だと三陸海岸から北の地方で好まれる食材で、八戸の陸奥湊朝市なんかに行くと同じようにやたら見かける事はあっても、全国的にポピュラーな食い物という訳ではない。韓国ではモンゲ(멍게)と呼びます。

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豪快に腹を引き裂かれて臓物がはみ出た形で売られているのは鮟鱇である。韓国ではアグ(아귀)と呼ばれる。鮟鱇料理というとコチュジャンで甘辛く煮詰めたアグチム(아구찜)にして食うのがこっちではポピュラーですわな。

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ユムシにせよ何にせよ韓国人は無脊椎動物がさぞかしお好きのようで、生きたままのタコもあっちこっちにいます。至る所でタコが脱走している光景も見られるので、うっかり踏んづけてしまわぬよう気をつけましょう。

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海産物ばかりでなく、韓国人のポピュラーなおつまみである蚕の蛹、ポンテギ(번데기)も大量にボウルに入れられ販売中。ここは乾物状態で販売してあるが、街中の屋台で大鍋で煮込んだポンテギを売っている店もある。

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それからチャガルチ市場で割とよく見かけるのが「鯨料理店」。シーシェパードの連中は日本人ばかりを目の敵にするが、隣の韓国でも商業的な捕鯨ではなく、たまたま網に掛かったものならOK(建前なのかも知れんが)という事で、鯨肉が流通しよく食べられている。コレコギ(고래고기)と書いてあるのが目印だ。それに鯨料理の本場は蔚山らしいので、機会があれば食ってみたい。

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あと韓国で刺身と言えばコイツですね。ホンオ(홍어)ともカオリ(가오리)とも呼びますが、こいつを発酵させた「ホンオフェ」が世界ではスウェーデンのシュールストレミングに次ぐ二番目に臭い食い物だというお話は有名で、ホンオフェの本場は全羅南道木浦市である。

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ところで釜山が本場の海産物と言えば何かというと、これ。まるで巨大ミミズが水槽の底にずっしり沈んでいるかのようなまたしても気持ちの悪いビジュアルであるが、日本ではヌタウナギ、韓国では「コムジャンオ」(꼼장어)と呼ばれるこの生物。

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ヌタウナギは世界各地の海に生息するポピュラーな生物で、姿形は確かに鰻のそれに近いが、厳密には鰻ではなく原始的な脊椎動物の一種であり、顎がない「円口類」の生物としてヤツメウナギに近い種とされている。

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そしてヌタウナギの最大の特徴は体から分泌する大量の粘液であり、世界各地の漁師を泣かせる迷惑な生き物で、殆どの国では食用にもされないが、何故か韓国釜山では大人気の食材で、ここチャガルチ市場の一角に「コムジャンオ通り」と呼ばれる横丁まで存在する。

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そんなコムジャンオ通りは夜にやってくると非常に賑やかである。焼き魚や刺身の専門店ばかりがずらりと立ち並ぶ夜の魚市場もまた活気に溢れていて、釜山ならではの光景。築地あたりとは全然テンションが違うな…

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特に海側に数十軒くらい並んでいる屋台風の店舗は店の前でアジュンマが忙しなく仕事をしている奥の席でオッサン達がテーブルを囲んでヌタウナギや魚料理に喰らいつきながら延々と呑みまくっていて、酒池肉林の様相を呈している。

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こんなに大量に呑んだくれてる人々がいるコムジャンオ通りだが、とっくに時間は夜の11時前である。とにかく韓国人も夜行性ぶりが凄い。築地だったら「すしざんまい」くらいしか営業しとらんぞ。このテンションの違いはお国柄としか言えないな。

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たいていどこの店の前にもヌタウナギの水槽がこれ見よがしに置いてあって「国内産」をアピールしていたりする。ヌタウナギを積極的に食うのは韓国くらいなので、国内産だけでは供給が追いつかず、日本やアメリカなどからの輸入物も結構多いらしい。

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本当に店が大量にあり過ぎてどこの店に入ればいいか混乱するが、あんまり客引きのうるさくない「南海刺身店」(남해횟집)とやらにお邪魔しました。地元民や観光客で非常に賑わっている。こういう店なら間違いない。

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主役のヌタウナギはコチュジャン入りの甘辛味か塩味かのどちらかを選べるらしいが、小サイズでも30000ウォンと高額。結構な高級魚なんですよ…アルミホイルを敷いた上に野菜と捌いたばかりでまだウネウネと動いているヌタウナギさんが載っかってきます。生々しいです。

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あの水槽の中でネバネバと沈んでいたヌタウナギさんの最期の姿です。拡大するとなおさら気持ち悪いなこいつら…テーブルの上で絶命の瞬間を見届けます。心の中で合掌しておくことにしましょう。

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韓国料理ではデフォルトの小皿の付け合わせの一品にはポンテギがやってまいりました。はっきり言って虫の味しかしませんけども、韓国人にはオヤツ・オツマミ感覚で食われています。歯で噛むと、プチっと薄皮が破けるこの食感がもう無理です。

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苦虫ならぬポンテギを噛み潰しながらしばらく待っていると鍋の上のヌタウナギさんも息絶えて動かなくなり、店員によってかき混ぜられてコチュジャン色の何とも小汚い出来上がり具合になる。これが釜山名物「コムジャンオ・ポックン」(꼼장어볶음)ニダ!!

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韓国シェアナンバーワンのハイトビールのお供にして、付け合わせのエゴマの葉で、サムギョプサルみたく巻いてヌタウナギの身を食う。触感は鰻というよりもイカみたいにプリプリしているし、肝心な味もコチュジャンの味しかしないので良くわからないまま完食。精力旺盛な釜山のアジョッシ達には滋養強壮食材としてすこぶる好まれているそうです。元気になりましたかね…分かりませんけども…

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福岡から200キロ、対馬から50キロしか離れていないのに、この食文化の違いはやっぱり異国の市場というべきもの。「日本から最も近い外国」釜山チャガルチ市場、そこはゲテモノ・奇食の宝庫なのであった。


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